第21話 生徒会長選挙

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「そう、わかったわ。で、さちえはどうして、一樹さんと一緒にいるの?」 「わたしは一樹さんの応援なの。一樹さんのことよろしくお願いします」  小柄なさちえは、晶子の問いにそう答えて赤くなった。 「僕たち、同じ剣道部員だしね」  一樹がさちえをフォローした。 「それで、一樹さんはどうして、生徒会長になりたいの?受験勉強もこれから大変になるんでしょ?」 「ハハハ。両立は可能さ、晶子さん。生徒会長と言っても、実際のところお飾りみたいなもので。実務は生徒会のほかの役員や事務局がやってくれるんだ。それに、生徒会長を務めたという実績は内申書や校長推薦状で、有利なんだ。つまり、損得勘定すると、受験にはプラスということでしょう」  黙って聞いていた朋美が憤慨の声を上げた。朋美は前の生徒会長で苦い経験をしていたからなおさらだった。 「そんな不純で、いい加減な考えで生徒会長の選挙に出ようと言うの。呆れたわ」  朋美の怒りに、一樹は慌てた。 「いや、それは受験から見てどうかということで。もちろん、生徒会長になったら真面目にやりますよ」  それでも、朋美の憤慨は納まりそうになかったので、一樹とさちえは早々に退散した。  その日の放課後、朋美は校舎の三階奥にある生徒会室にいた。朋美は生徒会役員で会計担当の有沢克己と部活予算の配分案を策定する作業を行っていた。 「これで大体、予算案はできたね」  同じ三年生の克己は朋美が入力しているパソコン画面を覗き込んだ。 「これから、どんな手続きが待ってるの?」 「うん。まず明日の生徒会役員会でこれを決定するんだ。そして、役員会の予算案として、来週水曜日に開かれる生徒総会に上程して、承認してもらえたら、早乙女校長の最終決裁ということになるね。だけど、今度の生徒総会は後期の生徒会長に立候補している生徒の選挙演説もあるんだ。今回は候補者が五人もいるから、時間割が厳しいよ」
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