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駅で一緒に降りた男がこちらを見て、仁王立ちしていたのだ。
「ゴクン。」
息を飲む。
この辺りは人通りの少い道であった。そんな状況は私を一層恐怖で支配した。
家まではまだ少し距離はあるものの、走れば5分と掛からない。
私は前を向くと、走り出すタイミングを見計る。
「・・・・・・コン」
男の革靴の足音が聞こえた。私はそれを合図に走り出す。
振り向きはしない。
だが、確実に男が追ってくるのがわかる。
それを強烈に感じるほどの気配と威圧を漂わせている。
(なに? なんなの? なんで私?)
そんな自問自答を繰り返しながら、私は走る。
この辺りは土地勘があるので、うまくいけば巻けるかもしれない。普段使わない路地や歩道橋などを駆使しながら、自宅を目指して走る。
5分後、自宅付近の信号まで来た。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ」
息切れをしていたので、呼吸を整えて、辺りを警戒する。
ふと振り向くと、男の姿が見えない。
「巻いた?」
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