【第2話】嵌める? 嵌められる?

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  乾杯して、食事を始めると、次第に羽村の機嫌は良くなっていった。 俺が努めて普段と同じ雰囲気に持ち込んでいるせいか。 それとも、隣にいることに馴染んでしまっているせいだろうか。 つい数日前に、一線を越えたばかりだっていうのに、この平常通りの空気はなんだ。 俺が言うのもなんだが、危機感がないと言うか何と言うか…… あっさりいつも通りに戻り過ぎだろ、お前。 一応、俺ら、そーゆーカンケイ、結んじゃった直後、なんだけど? お前は、知らねーかもしれねーけど。 俺はお前のその小さめな手を見ては、あの日俺に必死に捕まっていた感触を思い出すし。 気分良さげに飲んでいる横顔を見るだけで、あの甘い顔を重ねているし。 俺にとっては、当たり前みたいに隣で飲み食いしていた以前とは、違うっつーのに。 意識しているのも、ちょっと浮かれた気分でいるのも、俺だけみたいでものすごく悔しい。 .
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