1560人が本棚に入れています
本棚に追加
乾杯して、食事を始めると、次第に羽村の機嫌は良くなっていった。
俺が努めて普段と同じ雰囲気に持ち込んでいるせいか。
それとも、隣にいることに馴染んでしまっているせいだろうか。
つい数日前に、一線を越えたばかりだっていうのに、この平常通りの空気はなんだ。
俺が言うのもなんだが、危機感がないと言うか何と言うか……
あっさりいつも通りに戻り過ぎだろ、お前。
一応、俺ら、そーゆーカンケイ、結んじゃった直後、なんだけど?
お前は、知らねーかもしれねーけど。
俺はお前のその小さめな手を見ては、あの日俺に必死に捕まっていた感触を思い出すし。
気分良さげに飲んでいる横顔を見るだけで、あの甘い顔を重ねているし。
俺にとっては、当たり前みたいに隣で飲み食いしていた以前とは、違うっつーのに。
意識しているのも、ちょっと浮かれた気分でいるのも、俺だけみたいでものすごく悔しい。
.
最初のコメントを投稿しよう!