1339人が本棚に入れています
本棚に追加
ジャケットを脱いでラックに掛け、昨日と同じソファの一画に座った。
ふわり、キッチンの方から、いい匂いが漂ってくる。
「羽村ー、飯は何?」
つい尋ねた俺に、羽村は嫌々だということを隠しもせずに答える。
「……和食にしましたよ、お客様」
「ん、ご苦労」
やっぱり、日本酒には和食だよな。
嬉しくて笑う俺とは真逆に、引きつった笑みを浮かべる羽村が皿を運びながら答えた。
「お口に合うかわかりませんが、ね」
……その顔は、どうなんだ。
わざとお客様扱いするあたり、必死に抵抗しているようにも見える。
まあ、こうなるように仕向けたのは俺だから、仕方ないか。
羽村に少しでも早く近付きたいと願う、俺の欲のせい、だもんな。
わかってはいても、やはり落胆してしまう。
まだまだ羽村と俺の距離は、遠い。
.
最初のコメントを投稿しよう!