【第3話】埋めたい距離

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  「へえ」 俺に渡されたのは、深い青が印象的な猪口。 なめらかな手触りと、澄んだ色が綺麗だ。 羽村が自分用にと持ってきたのはカラフルなドットのグラス。 クリアなガラスにほんのり滲む色彩がいい。 色数の少ないこの部屋にもよく映える。 「綺麗な猪口だな」 しげしげと眺めている俺に、羽村は日本酒の瓶を持ち上げて微笑んだ。 「でしょ?」 その顔が何だか、得意げなのが気にかかった。 少しでも、羽村のツボをつくことができた、と喜ぶのは甘いだろうか。 単に、自分の選んだ物を褒められて嬉しいだけなのかもしれないし、な。 .
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