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「お先です」
そう言った俺に、数人が「お疲れさま」と声を返してくれた。
予定より少しだけ時間がかかったが、それも誤差の範囲だ。
会社のビルのエントランスを出ると、冷たい風が吹き抜けた。
ジャケットの襟を立てて風をしのぐ。
ああ、もう冬か、なんて思う。
だけど心は温かかった。
待ち焦がれた羽村との夜は、すぐそこだ。
羽村の部屋、あの心地良い空間。
美味い料理と美味い酒。
何でもない会話。
思い出せば思い出すほど、羽村への気持ちは強くなる。
あー、すげー会いたい。
早く、触れたい。
ニヤニヤしそうになるのを堪え、少し前のめりで夜道を歩く。
久しぶりに訪れたチャンスに、浮き足立っていたんだと思う。
ほとんど何も考えずに、羽村の部屋へと向かっていた。
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