【第5話】ひとりの夜

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  「お先です」 そう言った俺に、数人が「お疲れさま」と声を返してくれた。 予定より少しだけ時間がかかったが、それも誤差の範囲だ。 会社のビルのエントランスを出ると、冷たい風が吹き抜けた。 ジャケットの襟を立てて風をしのぐ。 ああ、もう冬か、なんて思う。 だけど心は温かかった。 待ち焦がれた羽村との夜は、すぐそこだ。 羽村の部屋、あの心地良い空間。 美味い料理と美味い酒。 何でもない会話。 思い出せば思い出すほど、羽村への気持ちは強くなる。 あー、すげー会いたい。 早く、触れたい。 ニヤニヤしそうになるのを堪え、少し前のめりで夜道を歩く。 久しぶりに訪れたチャンスに、浮き足立っていたんだと思う。 ほとんど何も考えずに、羽村の部屋へと向かっていた。 .
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