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「ま、どっちでもいいか。羽村の場合、カラダに聞いた方が話が早いし」
「ちょっ……!」
慌てふためいたような羽村の反応に気を良くして、俺はにやりと笑う。
そういう面白い顔、他のヤツに見せんなよ? なんて思いながら。
「じゃ、夜にな」
そう言って仕事に戻ろうとした俺を、羽村が引き止める。
足を止め、彼女の方を振り返る。
羽村は少し俯き加減に、俺に訴えた。
「……ワインは、やだ」
何かを思い出すような羽村の表情に、嫌な予感が的中していることを悟る。
ワインを拒否した理由なんてどうでもいい。
今ここで、お前が“誰か”を思い浮かべたこと、そのこと自体が歯痒くて悔しい。
「……了解」
何とか絞り出した声を残し、俺はその場を去った。
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