2030人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「ふーん……」
俺は目を細めて羽村を見た。
何故かゆっくりと、彼女は目を逸らす。
そのリアクションにすらムッとしてしまう、けれど。
今ここで問い詰めても、仕方ねーか。
気を取り直した俺は、今晩の予約を取りつけにかかる。
「ま、後で聞くとするか。今日はワインにするか?」
「えっ……今日、来るの?」
即座に返ってきたのは、拒否を匂わせる返答。
思わず顔が歪んでいくのを止められはしなかった。
俺は一歩羽村に近付き、彼女の瞳に鋭い視線を投げる。
「……やっぱり何かあったんだな?」
「な、何もないって!」
必死に否定することが余計に怪しいと、わかっているんだろうか。
じっと見つめていた羽村の表情を見ていたら、また意地の悪い台詞を吐きたくなってくる。
俺は羽村の耳元に、そっと顔を寄せた。
.
最初のコメントを投稿しよう!