【第7話】幸福な朝とつかの間の日常

12/16
前へ
/16ページ
次へ
  しばらくすると、彼女はいつも会社で見ている“羽村”に整えられて出てきた。 しかし表情は、不機嫌そうだ。 さっきのことが尾を引いているんだろうか。 「そんな顔すんなよ、朝から」 「誰のせいよ」 「せっかく綺麗にしてんのに、台無しだぞ」 そう言ってやると、羽村は一瞬だけ頬を紅潮させて、俺の方をキッと見た。 「っ、お世辞なんていいから! もう出るわよ、準備できてんの!?」 「当然だろ」 そう言って、鞄を手に取った。 どうせ一度家に帰るんだ、身支度なんて特にすることはない。 羽村が着替えている間で十分事足りた。 そうして普段とは違う朝を迎えた俺たちは、一緒に羽村の家を出た。 .
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1576人が本棚に入れています
本棚に追加