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しばらくすると、彼女はいつも会社で見ている“羽村”に整えられて出てきた。
しかし表情は、不機嫌そうだ。
さっきのことが尾を引いているんだろうか。
「そんな顔すんなよ、朝から」
「誰のせいよ」
「せっかく綺麗にしてんのに、台無しだぞ」
そう言ってやると、羽村は一瞬だけ頬を紅潮させて、俺の方をキッと見た。
「っ、お世辞なんていいから! もう出るわよ、準備できてんの!?」
「当然だろ」
そう言って、鞄を手に取った。
どうせ一度家に帰るんだ、身支度なんて特にすることはない。
羽村が着替えている間で十分事足りた。
そうして普段とは違う朝を迎えた俺たちは、一緒に羽村の家を出た。
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