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「……てか、なんでいるの?」
背中越しに投げられた疑問に、俺は振り返る。
羽村は少し眉を寄せて、さらに質問を重ねた。
「帰って支度しなくていいの?」
……変なものを見るかのような目を向けるのはやめてほしい。
確かに、普段ならそうしてる。
だけど今日は急ぎの仕事もないし、比較的ゆっくりできるはずだ。
何より、朝日が差し込む時間にここにいられるのが新鮮で、何となく帰り難い。
水を飲み、髪の先に溜まってきた水滴を振り払いながら、俺は答える。
「あー、いいよ。今日、ヒマだし」
「えー……、って、アンタ」
「ん?」
少し、低くなった彼女の声に反応して顔を上げると、眉間のシワがさらに深くなっていた。
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