【第7話】幸福な朝とつかの間の日常

4/16
前へ
/16ページ
次へ
  「……てか、なんでいるの?」 背中越しに投げられた疑問に、俺は振り返る。 羽村は少し眉を寄せて、さらに質問を重ねた。 「帰って支度しなくていいの?」 ……変なものを見るかのような目を向けるのはやめてほしい。 確かに、普段ならそうしてる。 だけど今日は急ぎの仕事もないし、比較的ゆっくりできるはずだ。 何より、朝日が差し込む時間にここにいられるのが新鮮で、何となく帰り難い。 水を飲み、髪の先に溜まってきた水滴を振り払いながら、俺は答える。 「あー、いいよ。今日、ヒマだし」 「えー……、って、アンタ」 「ん?」 少し、低くなった彼女の声に反応して顔を上げると、眉間のシワがさらに深くなっていた。 .
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1576人が本棚に入れています
本棚に追加