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終始文句を言いたげな顔をしながらも、朝食はきっちり準備してくれた羽村。
部屋中にトーストとコーヒーの匂いがふわりと漂う。
何気ないその親切さにまた“手放したくない”という欲が膨らんでいくのを自覚しながら、俺はお言葉に甘えて、普段は食べない朝食を摂ることにした。
朝からこんな風にゆっくり食事をするってのもいいもんだな、なんて思いながら。
「急ぎの仕事とか、大丈夫なわけ?」
「ああ。昼から出よーと思ってたし」
「そう」
さして興味なさそうな羽村は手早く食事を済ませて、身支度を始めた。
いつもここでしているからだろう、目の前で何気なく化粧に取りかかったもんだから、俺はそれをじっと見守った。
途端に、羽村は頬を引き攣らせる。
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