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「……あんまりじろじろ見ないでよ」
「なんでだよ」
「気が散るから」
「ふうん?」
気のない返事を返すと、彼女は深い溜息を吐いた。
「……化粧って、一応、女の裏側なんだから。ちょっとは配慮とか、さあ?」
そう言って俺を咎める羽村に、平気な顔して返事を返す。
「いーじゃねーか、見るくらい。手は出してねーだろ?」
「……」
何を言っても無駄だ、と思ったのか、彼女はもうそれ以上俺に意見することはなく、自分の顔に向き合った。
鏡を見ながら器用に指先を動かしているのを見て、俺は何となく愉快な気分になっていく。
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