一人でいいからほっといて

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結局、土曜日も日曜日も誰もいないオフィスにこもりきりだった。 キーボードを叩きながら憎たらしい坂崎の顔が浮かんできてはムカついたけど、あの捨てゼリフのおかげでなんとか資料を作り上げた。 あいつの世話になるのだけは嫌だから。 今でも思い出すとハラワタが煮えくり返る。   ――二年前のあの日、 入社六年目にして私は昇進のチャンスを掴んでいた。 私は食品メーカーで営業部に所属している。 営業部に女性は数名いるが、私以外はみんな営業事務で内勤しかしないから、今のところこの会社では私が唯一の女性営業だ。 この時期、私と坂崎は営業一課で売上のトップ争いをしていた。 売上次第では、前年先に主任に昇格していた坂崎に追い付けるかもしれない。 当時の課長にも、密かに内示を受けていた。 絶対に坂崎と肩を並べてやる、そう思っていた。
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