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「こんな変装でいいのかな」
タツオはジャングル柄(がら)のアロハシャツの胸をつまんで引っ張った。野球帽をかぶり、涙滴型のサングラスは鏡のように周囲を反射している。自分の腕をつまんだ。
「それにこのタトゥのプリント。なんだか妙にかゆいんだよね」
両腕にはびっしりと紺色のチェーンのタトゥが入っていた。パンツはだぶだぶのジーンズで、どう見ても地方の不良少年のようだった。
「それでいいのよ」
そういうジョージは長い金髪のウイッグをつけて、ぴちぴちのTシャツを着ている。問題なのは胸のふくらみがあることだった。パッド入りのブラジャーをつけているのだ。下半身はパンツではなくミニスカートだった。元々細身でスタイルのいいジョージが、そんな格好(かっこう)をするとファッションモデルのようだ。
ジョージが腕を組んできた。いい匂いがする。この天才児はきちんとメイクをしているのだ。どこでそんなものを習ったのだろう。なにをしてくるのか予測のつかない生徒だった。
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