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 ふたりが歩いているのは、東園寺(とうえんじ)の山荘からバイクで十五分ほど離れたこの地方の県庁所在地だった。人口は五十万と少々。日乃元(ひのもと)では地方でも中心都市ならば電器街があった。この街では新アキハバラ通りというらしい。県庁近くのビジネス街から、ほんの数分で辺(あた)りの看板がみなデジタルのアニメ絵に替わっている。 「今ごろ、向こうではちゃんとアリバイつくってくれてるかな」 「心配ないよ。ふたりとも進駐官の卵だ。なんとかごまかしてくれるだろう」  テルとクニは部屋にこもって、3組1班で夏休みの宿題をしていることになっていた。食事はルームサービスをとり、部屋のなかではタツオとジョージの会話の録音も流されている。夕食の時間までに戻れば、誰にも気づかれないはずだった。
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