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『自分に素直になるって、エネルギーいるもん』
そう言った羽村の真意は何だろう。
『……なのにその労力を惜しまないで、気持ちを伝え合った2人って、すごいなぁ、と』
その言葉に誰と誰を重ねているんだろう。
俺であればいい、と願うのは簡単で。
その妄想が現実になればいい、と望むのは無謀だ。
理由は簡単。
羽村は俺のことを、ただの迷惑なオレサマ、としか見ていない、から。
そんな風に、自虐的な言い訳を重ねては。
自分の心の痛みを和らげるように、記憶の中から希望を見出す。
俺の趣向を知って受け入れてくれること。
心が開いた気がしたあの夜のこと。
繋がっている時の甘い顔。
少しだけ意識してくれた瞬間。
……そんな、小さな小さな希望の光をかき集めて、一体、何になるっていうんだろう。
「……知るかよ」
勝手に飛び出した淡い呟きは、軽い舌打ちにも、聞こえた。
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