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「……なのにその労力を惜しまないで、気持ちを伝え合った2人って、すごいなぁ、と」
羽村は、一体何を噛みしめているんだろう。
相手不在にも感じるその呟きに、言い様のない気持ちが膨らんでいく。
……彼女の中にも、高井や宮野と同じような感情が、燻っているということなんだろうか。
だとしたら……その相手は、俺じゃないことだけは確かだ。
そしてその事実が、俺の心をまた、引っ掻いていく。
「……へえ」
何とか絞り出した微かな相槌に、羽村は体を起こした。
体勢を整えて、机に向かう。
「さて、仕事しよっかな」
「……ああ、そーだな」
話を畳んだ羽村に倣って、俺も自分のMacへと向き直る。
だけど心はざわざわと落ち着かないままだ。
集中なんて、到底できない。
羽村は……高井と宮野の関係を、一体何と、いや誰との関係を……重ねているんだろう。
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