1340人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「何飲む?」
という、羽村の声。
反応しようにも、俺はちょうど伸びをしている最中で。
俺の言葉を待ってくれているのを察しながら、ゆっくり腕を下ろして返事をする。
「寒かったからなー、熱燗か焼酎お湯割」
その返答に、羽村は「んー」と少し考えてから。
「じゃあ熱燗。私も一緒に飲むから」
そう言って、準備を始めた。
かちゃかちゃと、食器の重なる音がする。
そんな生活音にすらホッとするのは、彼女が傍にいる空気のせいだと思う。
レンジが稼働し始めた、とわかったのは、電子音のせいだった。
部屋には、俺がつけたテレビの音と、わずかなレンジの音だけが響く。
いままで何度か熱燗を二人で飲んだが、あるとき羽村は時折、レンジを使わずに鍋で温めることもあると話していた。
.
最初のコメントを投稿しよう!