1339人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
邪魔するつもりなんて、なかった。
あの日以来、マトモに羽村と会話すらできない小さな俺でも、理解していた。
お前が神谷さんを選ぶなら、俺が何をしたって無駄だって、わかっていたから。
だから……土曜は大人しくしているつもりだった。
けれど、気になって気になって、仕方ない。
何とか紛らわせようと昼からビールをあおっても酔えなくて、もうどうしていいかわからなかった。
食いてーな、なんて思ったあの赤い頬を、神谷さんの前でも晒すのか?
俺だけが知ってる、あの甘い顔を神谷さんにも見せるのか?
その柔らかな肌を、神谷さんにも触れさせるのかーーーー?
考えたくないのに、思考は途切れなかった。
イライラが募っていくのを止められない。
苛立ち紛れに手にしていたビールの缶を握りつぶす。
そんなことしたって、闇は晴れないのに。
力なく身を預けていたソファから立ち上がると、床に転がった空き缶を蹴ってしまった。
もう何缶目だろう、数えていないが冷蔵庫のストックは底をついていた。
.
最初のコメントを投稿しよう!