【第14話】星降る夜

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  ……そういや、人のピアスを付けてやるなんて、初めてだな。 そんなことを思いながら、手の中で踊らせていたピアスを羽村の耳元へと持っていく。 柔らかい耳朶に指を沿わせて、金属のポストを通す。 キャッチを止めて、角度を調整した。 それを、両耳分繰り返す。それだけだ。 時間にすれば、ほんのわずかなものだろう。 なのにそれは、随分長く感じた。 俺達を包むのは、形容し難い静寂。 羽村は……可笑しい程にぎゅっと目を瞑っている。 本人が意識しているのかどうかはわからないが、唇もきゅっと噛んでいた。 何だよ、見たくないものでもあんのかよ、って言いたくなる。 だが、それは見ようによっては、嫌がっているようにも見えるし、俺の動きにじっと耐えているようにも見える。 どちらにせよ……良い感情ではなさそうだと感じて、俺には何も言えなかった。 普段、こんな風にまじまじと耳元を見ることなんてなかったからだろうか。 俺はその耳の曲線から続く首元や鎖骨、顎のラインに至るまでを、魅入られるように眺めていた。 ほんの少しだけ紅潮した頬。 触れて、撫でて、噛み付きたくなる、白い肌。 羽村のすべてが、俺を煽る。 ……だけど、俺は何もしなかった。 ピアスを付けてやって、すぐに大人しく離れる。 ふと視線を落とした先、羽村の指先が小さく震えているのを見つけてしまったからだった。 .
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