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「満足のいくものを、より素敵なものを……作り上げたいと思うのが、私たち制作側なんです」
美しい笑みを浮かべた女が、クライアントの心に滑り込む。
そして「ね?」と俺に向かって、首を傾げる。
あなたも同じでしょう? と、言外に含ませて。
……ああ、そうだ。
俺だって納得のいく仕事をしたい。
目を奪うものを、驚きを与えられるものを、そして誰かの心に刺さるものを作りたい。
その思いは同じだ。
だが、俺とお前を一緒にするな。
お前は、今日まで練り上げたデザインを、この現場で完璧に作り上げようと取り組む羽村をどう見ている?
慣れない場でも前向きに、必死になって頑張っている宮野にどう感じている?
羽村に、宮野に、触発されるように自分の仕事を全うしているスタッフたちのことを、どう思っているんだ?
俺には理解できない。
お前がどうしてそこまでこの場をかき乱そうとするのか。
どうしてそんなに俺のデザインを推そうとするのか。
そして……どうしてそこまでして、羽村のデザインを、そして羽村自身を排除しようとするのか。
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