【第17話】山場と衝突

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  虚をつかれたからだ、俺は仮面を忘れ、思わず眉を寄せていた。 「……は?」 遠慮のない声が漏れる。 それくらい、衝撃的だった。 しかし、目の前の女は俺の変化にも気が付かない様子で続ける。 「ね? そう思いません? それに長瀬さんだって、その方が嬉しいでしょう?」 「……一体、何を……」 何を言ってるのか、わからない。 この女は、自分が何を言っているのか、わかっているのか? そりゃ、自分のデザインが認められるのは嬉しいに決まってる。 が、今この状況で、その提案を喜ぶ馬鹿がどこにいる? 撮影は始まっている。 羽村が、宮野が必死になって作り上げた世界がそこに出来上がっている。 いまさらデザイン変更なんてことになったらどうなるか。 理解できないほど経験が浅いわけでもないだろう。 予測するまでもない。 待っているのは、破綻だ。 喉が渇いて気分が悪い。 意味不明な理論に惑わされて、次の一手が思いつかない。 戸惑いを隠せない俺の腕に、御園さんはにっこり微笑みながら触れてきた。 「長瀬さんのデザインの方が、私は素敵だと思うんです。絶対こちらの方が刺さります、ターゲットにもきっと……」 羽村不在で、そしてクライアントそっちのけで持論を展開するこの女に、正直……ぞっとした。 そう、それはもう、触れられているところからカラカラに乾いて乾涸びて、最後には崩れ落ちてしまいそうだと感じるほどに。 .
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