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結局、あの日は朝まで眠れなかった。
羽村の表情が、声が、叫びが、焼き付いてはなれなかったからだ。
翌日、少しでも早く羽村に会いたくて、いつもより早く出社した。
が、彼女は徹夜で仕事をしていたらしい。
行き先を告げるボードには『昼出社』と書かれていた。
落胆しながら席に着く。
隣から物音がしないことをこんなに寂しく思うことはない。
俺は午後から打ち合わせと撮影の手配で出ることになっていた。
ここから数日は、この席で羽村と顔を合わせることはないだろう。
こんなタイミングに、と舌打ちしたい気分になる。
Macを立ち上げると、御園さんからの新着メールが届いていた。
面倒だと思いながらも目を通す。
『もうすぐ“Me:waku”の案件も終わりですね。
いろいろありましたが、長瀬さんとお話できなくなるのが寂しいです……。
せっかくなので打ち上げをしませんか?
お仕事のことや、その他にも相談に乗って欲しいこともありますし……是非ご一緒したいです!
またご連絡しますね、よろしくお願いします。
鳳凰堂 御園 京香』
深い溜息がこぼれた。
いま、この女を相手にしている余裕はない。
そんなことを思って体を伸ばしていたら、はた、と気が付いた。
……羽村は、どうして俺と御園さんを結びつけたんだ?
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