【第19話】終結

2/39
1223人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
  結局、あの日は朝まで眠れなかった。 羽村の表情が、声が、叫びが、焼き付いてはなれなかったからだ。 翌日、少しでも早く羽村に会いたくて、いつもより早く出社した。 が、彼女は徹夜で仕事をしていたらしい。 行き先を告げるボードには『昼出社』と書かれていた。 落胆しながら席に着く。 隣から物音がしないことをこんなに寂しく思うことはない。 俺は午後から打ち合わせと撮影の手配で出ることになっていた。 ここから数日は、この席で羽村と顔を合わせることはないだろう。 こんなタイミングに、と舌打ちしたい気分になる。 Macを立ち上げると、御園さんからの新着メールが届いていた。 面倒だと思いながらも目を通す。 『もうすぐ“Me:waku”の案件も終わりですね。  いろいろありましたが、長瀬さんとお話できなくなるのが寂しいです……。  せっかくなので打ち上げをしませんか?  お仕事のことや、その他にも相談に乗って欲しいこともありますし……是非ご一緒したいです!  またご連絡しますね、よろしくお願いします。  鳳凰堂 御園 京香』 深い溜息がこぼれた。 いま、この女を相手にしている余裕はない。 そんなことを思って体を伸ばしていたら、はた、と気が付いた。 ……羽村は、どうして俺と御園さんを結びつけたんだ? .
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!