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「角度の問題でそー見えたんだろ? 俺から抱いたりしてねーよ。勝手に寄っかかってきたから適当に流しただけ」
めちゃくちゃ不快だったけど耐えたんだよ。
あの場ではそーするしかなかったっつーか……
いや、今となっては浅い考えだったことは認めるが、あのときはああやって受け流すのがベストだと思ったんだよな。
「で、でも……」
俺の語る真実に、羽村は眉を寄せる。
それは何かを咎めているようにも見えた。
さっき俺が立っていた場所にもう一度視線を走らせる彼女を見て……ふと思い当たる節を言ってみる。
「拒否して騒がれたら後々面倒だろ。余計お前に当たり散らすの、目に見えてたし」
さっきとは、ワケが違うんだって。
撮影現場で騒がれたなんてことになったら悲惨だったろーし。
なんて言葉を言外に含めた俺の発言に、羽村は目を見開き、驚きを顔全体で表現していた。
それは何に対する驚きなのかはわからなかったが、嫌な雰囲気はない。
ふと、添えるだけになっていた手に力を込め、羽村の頭をゆらゆらと揺さぶってみる。
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