【第21話】取り戻した距離、踏み込めない溝

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  戻った会社で佐川さんへの報告を終えると、俺は高井と宮野の元へ向かった。 昨日のことを詫び、感謝の言葉を告げるためだ。 しかし二人は揃って首を横に振った。 「澪先輩の方も問題解決したし、長瀬さんの撮影も無事終わって良かったですぅ!」 「お疲れさまでした。疲れてるでしょうし、今日は早めにあがった方がいいですよ」 なんて労ってくれる。 本当に、いい後輩だと思う。 「ありがとう。そうさせてもらうよ」と言い残し、俺は席へ戻った。 逸る気持ちを抑えながら残務を処理し、足早に会社を出る。 頬を刺す冷たい風も、気にならない。 意識はもう、羽村の家にしか向いていなかった。 以前、羽村とばったり会った酒屋の前を通る時。 そうだ、土産……という思いをめぐらせた瞬間、ハッと気付く。 何を飲みたいか、何を作るつもりか、聞くのを忘れていたことに。 .
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