【第21話】取り戻した距離、踏み込めない溝

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  しまった、と思う。 詰めが甘いのは、やはり浮かれていたからだろうか。 せっかく久しぶりの時間だ、ちゃんと羽村の飲みたいものを選びたい。 彼女が作ってくれたものに合う酒で、二人の時間を楽しみたい。 羽村に、喜んでもらいたい。 そんな思いで、数々の酒が並ぶ棚を前にしても、何も選べなくなっていた。 今、羽村が作ってくれているものは何だろう。 一生懸命考えてはみるが、全然浮かびはしなかった。 羽村のレパートリーすべてを網羅しているわけじゃないから、仕方ないかもしれない。 ……さて、どうするか。 ここで立ち尽くしていたって、何もならない。 俺は自分でもどこかおかしい決断だと理解しながらも、最善だと思われる方法で、この悩みを解決することにした。 .
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