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腕の中で、わずかに動いた体温。
俺の意識を引き戻したのは、その動きだった。
……羽村、か。起きた、のか?
そう理解しながらも、まだ、目は開けられない。
眠気もそうだが、この満たされた気分で抱き合う心地良さが勝った。
瞼に感じる明るい光。
もう朝が来てしまったようだ。
でも、まだ時間はあるんだろう。羽村がゆっくりしているのが、その証拠だ。
微睡みながら再び眠りに戻ろうとするの耳に、飛び込んできたのは小さな声。
「……ウソ、みたい……」
呟きと共に、細く小さな何かが頬に触れる。
羽村の指、だろうか。
その指先がくすぐったくて、思わず身じろぎしてしまう。
遠慮がちな触れ方に、戸惑いとは違う何かを感じた。
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