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○学校・外観
授業が終わり、雑談をしながら多くの生徒たちが校門から出て行く。
その校門には”リバル仮設中学校”と書かれた簡素な貼り紙が貼られている。
女学生「ア~スナぁ~っ!」
ひとりの女学生が元気よく走り、前をいくアスナの元へ。
アスナ、ふり返る。
アスナ「んっ?」
女学生「もーっ、先にいくなんてヒドイよー」
アスナ「そんなこと言われてもねぇ……一緒に帰る約束もしてないし」
女学生「友達なんだから細かいことは気にしないッ!」
アスナ「……まあ、いいや。んで? なにか用?」
女学生「うん、実はさ。今日ちょっと一緒に付き合ってほしいところがあるんだけど」
アスナ「ゴメン。パス」
女学生「えーっ! なんでよーッ!」
アスナ「今日はほら、あれだから」
アスナが空を指差す。
女学生「あれ?」
女学生、首を傾げて空を見上げる。
空には薄い白い膜が張られており、その膜の向こうにうっすらと青空が見える。
女学生、その空を眉をしかめて見ていたが、すぐにハッとした顔になってアスナを見る。
アスナ、笑顔。
アスナ「そーいうこと。んじゃねぇ」
アスナ、女学生に背中を向けてこの場を去る。
女学生、アスナに何か言おうと口を開くがそれを躊躇い、小さくため息をつく。
○街中
笑顔を浮かべながら歩く街の人々とは対照的な憂鬱な表情で歩くアスナ。
やがて駅へとたどり着く。
○電車内
人の少ない電車内で、隅の席に座り物憂げな顔のアスナ。
アナウンス「大変長らくお待たせしました。次は終点のグラゼ。グラゼとなります。お降りのお客様はお荷物などお忘れ物なきようにご注意ください」
アスナゆっくりと立ち上がる。
と、アスナの携帯電話に着信。
アスナ「んっ?」
アスナ、携帯電話を取り出す。画面の表示には父親の名前。
険しい表情。
アスナ「お父さんのバカ」
アスナ、電話を切る。
○グラゼ
駅舎だけがぽつんと佇む壊滅した街。
復興は進んでおらず、あたりは閑散としている。
無人駅の改札を抜け、アスナは迷いのない足取りで街中を進む。
○グラゼ・アスナの家跡地
何もない基礎だけが残されたアスナの家だった場所。
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