11:凛として

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 そっか、カタツムリと紫陽花だ。  陸……  気づいたからだよね? 私があの場所に近づいて不安定になったから。それを感じて、だから……  苦しくなる胸。でもこれはあの場所の苦しさとは違う苦しさ。  溢れ出そうな"何か"を必死で押さえている苦しさだから。  鏡の中のわたしは苦笑い。  トイレを出る。陸を捜す。陸は誰かと喋っていた。誰だろう? 陸は私に合図を送ってきた。私は頷いて、先にエレベーターに乗った。  エレベーターを降りてすぐの乗り口に立つ。  反対側のホームに電車が着く。生ぬるい風。発車した電車を目で追う。  もう一度反対側のホームに目を向けた。  体が強ばる。  そこに、気まずそうな海とあの"ヒト"  またあの腕は海に巻き付いた。 .
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