12:一人の時間

7/13
前へ
/436ページ
次へ
「どの色めがお好きですか?」  私の着付け担当の方が、笑顔で訊く。な、なんか顔がヒクヒクしていますよ?  担当の後ろに控えていたおねえさんギリギリの方が、新人をちろりと見てから言った。 「すみません。新人なもので、研修中でございます。担当換えも出来ますが、……」 「いえ! この方で。フフッ、私も昨日、やっと新人研修終わったんですよ」  担当換えの言葉に、目の前に新人さんは目を伏せていた。だけど、私の発言で伏せていた目が上がる。 「色めかあ、……」  なぜか草原の景色が浮かぶ。 「爽やかな緑」  勝手に口が答えていた。 「少々お待ちください」  新人さんとベテランさんがたくさんかけてある浴衣の幾つかを持ってくる。 「こちらが古典的な柄、こちらが現代風の柄、こちらが古典的な柄を活かした今風にアレンジされている柄になります」 .
/436ページ

最初のコメントを投稿しよう!

160人が本棚に入れています
本棚に追加