12:一人の時間

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 くるり。  後ろ姿が前向きに。 「あれ? のんちゃん!」  あー、やっぱり。先輩も浴衣姿。 「先輩もですか?」  浴衣の袖を広げる。 「うん、そう」  先輩も袖を広げた。その後ろににょきっと立つ男性。 「こんにちは」  ニヤリ。なーるほど。 「こんにちは、先日は美味しいオムライスとジャスミンティありがとうございます」  barのバーテンさん。 「いえいえ、こちらこそ」 「うふふ、お似合いです」  先輩をニヤリと見る。……先輩もなぜかニヤリとしている。 「慌てないし、恥ずかしくもないわ。だって私、胸を張ってこの人の隣に立ってるもの」  先輩はバーテンさんを見て、ニッコリ笑った。素敵な笑顔で。 「俺は恥ずかしいよ。浴衣のうなじの威力にね」  ああ、もうこの返し、流石だな。 .
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