12:一人の時間

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「はい、私もそう感じてるけど、しっくりくる言葉が……出てこなくて」 「一人の時間は当たり前にあるものだよ。当たり前を当たり前に過ごす。違う?」  バーテンさん、流石だ。 「そうね、久しぶりの当たり前を満喫しなさい」 「はい! では当たり前を満喫してきます」  そう言って、二人と分かれた。  日傘は雨天兼用のものを買った。  白地に、薄く六つの撫子柄。浴衣と同じ柄。  私が選んだ浴衣は、古典的な撫子柄。淡いクリーム色の生地に爽やかな緑の流線。散りばめられた、落ち着いた色合いの撫子。  同じように、日傘も選んだの。  六階に戻る。 「お帰りなさいませ」  担当の方が気づいてくれて、声をかけてくれた。 「はい、ただいまです。えっと、レシートですよね」  買い物レシートを見せる。 「日傘ですか?」 「ええ、フフッ、浴衣と同じ撫子柄が入っている日傘です」 .
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