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家の前で深呼吸する。……おかしなものだ。苦笑いした。
「ただいまあ」
純日本家屋の引き戸をガラガラと引いた。
「……」
相変わらずだな。
パタパタパタと時間差で、スリッパの音が聞こえてきた。
「おかえり、のりちゃん」
母さんはのんびり屋さんだから、いつもこうなのだ。
「ただいま」
もう一度言って、玄関を上がる。パタパタ歩く母さんの後ろに着いて歩く。
「茶の間に出しといたわよ。見といて」
茶の間の前で言われて、立ち止まる。母さんは止まらず台所に行ってしまった。
茶の間に入ると、綺麗に小物が並べられていた。帯も下駄もある。流石母さんだ。
独り暮らしをはじめて親の凄さを実感する。
「のりちゃーん!」
台所から呼ばれた。
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