13:隠れていた当たり前

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 家の前で深呼吸する。……おかしなものだ。苦笑いした。 「ただいまあ」  純日本家屋の引き戸をガラガラと引いた。 「……」  相変わらずだな。  パタパタパタと時間差で、スリッパの音が聞こえてきた。 「おかえり、のりちゃん」  母さんはのんびり屋さんだから、いつもこうなのだ。 「ただいま」  もう一度言って、玄関を上がる。パタパタ歩く母さんの後ろに着いて歩く。 「茶の間に出しといたわよ。見といて」  茶の間の前で言われて、立ち止まる。母さんは止まらず台所に行ってしまった。  茶の間に入ると、綺麗に小物が並べられていた。帯も下駄もある。流石母さんだ。  独り暮らしをはじめて親の凄さを実感する。 「のりちゃーん!」  台所から呼ばれた。 .
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