13:隠れていた当たり前

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「わかった。流石母さんだね。まだまだだなあ私」 「フフッ、まだまだね」  うん、まだまだなんだ。  うん、まだ言えていない。どのタイミングが良いんだろう?  まだまだな私が、ちゃんと伝えられるかな?  台所から茶の間に移る。  父さんがビールを飲んでいた。 「父さん、お疲れ」  風呂敷を広げて小物を包む。母さんの用意したカバン……  結婚式の引き出物を入れるビニールの大口カバンだった。 「確かに、雨にも強いし、入れやすいけど……」  苦笑。 「浴衣がないんじゃないか?」  父さんが覗きこむ。 「浴衣はデパートで買ったの。小物だけ必要だから」 「海君とか?」  ドクン。キュッと息が止まる。 「ううん」  なんとか、返事だけした。 .
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