13:隠れていた当たり前

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「どうした? のりこ、独り暮らしが寂しくなったんか?」  さとにいがニヤニヤとからかう。  寂しいか……  うん、寂しくて、不安。 「うん……」  上手く言葉は続かない。 「海とケンカでもしたんか?」  ケンカか…… 「浴衣、海君とでしょ?」  母さんが追い討ちをかける。 「ううん、違う。……海とは別れたよ」  ……  ……  沈黙が苦しい。 「……じゃあ、浴衣は誰のために着るんだ?」  父さんがそうポツリ。 「自分のため」  私もポツリ。 「ふーん」  兄さんもポツリ。 「自立ね」  母さんもポツリ。  ……え? 自立?  母さんを見ると、いつものように笑っていた。 「自分のために浴衣を着るんでしょ? ね、自立じゃない。社会人になった証拠だわ」 .
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