第2章 過去の事件

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事件の後、 村主君は、逃げるように転校していき 色んな憶測の噂は、あたしと家族に向かって 投げられて、 精神のバランスを保つのは並大抵ではなかった。 パパの浮気の件が世間に公表されてしまったことも、 私たちの悲劇だった。 何より、そのことから逃げるように外国に行ってしまったことは、 まるで捨てられた悲しい家族のように他人には映ったらしい。 外見は、目立たないように、 人の上には立たないように 勉強だけに集中し、自分の居場所にした。 それでも、家族がつながっていられたのは、 ママがあっけらかんとした性格だったおかげだ。 私はあの事件について、 一度彼と話がしたいと思っていた。 全てが、憶測であって真実ではないから。 真実は、彼にしかないのだから。 ただ、あの時閉じ込められる前 一瞬の彼の殺意のような感情を垣間見た あの、いいようのない恐怖 全てがあの瞬間に凝縮され 思いだすだけで身体がこわばってしまう。 この間、声を掛けられた時、 また、彼に気づいてあげなかった。 あの時の恐怖がまた押し寄せてきた。 また、彼のこころのバランスを壊したかもしれない。 これ以上誰も傷ついてほしくない。 今ある大切な人たちを誰一人として失くしたくないから。 どうか、あたしの不安が勘違いでありますように。
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