第2章 過去の事件

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結局私は、彼の声すら聞いたことがなかった。 一度彼と話がしたいと思っていた。 全てが、憶測であって真実ではないから。 真実は、彼にしかないのだから。 ただ、あの時閉じ込められる前 一瞬の彼の殺意のような感情を垣間見た あの、いいようのない恐怖 全てがあの瞬間に凝縮され 思いだすだけで身体がこわばってしまう。 この間、声を掛けられた時、 また、彼に気づいてあげなかった。 あの時の恐怖がまた押し寄せてきた。 また、彼のこころのバランスを壊したかもしれない。 モ-リのいうトラウマがあたしにあるとするなら、 あたしの言葉が人を傷つけてしまっているかもしれないこと。 こんなに怖いのは、きっと今が幸せだから。 一つとして失くしたくないから。 どうか、あたしの不安が勘違いでありますように。
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