第3章 事件の真実

2/9
前へ
/74ページ
次へ
--------------------------- 「小畑さん。」 あたしの名前を呼んだあの人------ もう5年前になる あの時あたしは 村主建(すぐりたつる)君の事を知らなかった。 靴箱に入っていた手紙。 一日に何通も入っていた中の一つ。 当時のあたしは、 ネットに写真を上げられたり、 2チャンネルに行動を書きこまれたり 色んなトラブルを抱えていた。 登下校を待ち伏せされたり、 告白されたり 日常茶飯事だった。 彼もそのトラブルのひとつに過ぎずに 私の中ではたいしたことではなかった。 当時けっこう強気だったあたしは 彼の教室に行き 「あなたが、村主君? 知らない子にこういうの貰うの気持ち悪いから  もう、やめてくれない?」 彼からの手紙を読みもしないで突き返したんだ。 後で、見せてもらった手紙には 入学したばっかりの時に落し物を拾ったものを 職員室に届けたことがあって、 それが今頃になって本人に届いたこと。 声が掛けられず手紙にして靴箱に入れる事を詫びるものだった。 彼にとって、天使のように思えたらしい。 それを拾って届けた相手があたしだと知り 運命だと思ったらしい。 手紙は、何度も書き直し、 何度も手渡そうとした末の行動だった。 その思いをあたしは あっけなく しかも最悪な態度でぶちこわしたのだった。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加