第3章 事件の真実

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あたしは、村主君が、 時々嫌がらせのように入れていた、 家族の報告書をポストに投げ込む現場を、 みつけてしまった。 彼の精神を狂わせるほどひどいことをした。 その事実を気付けてなかった。 だから。 「あなた、誰?  家族を付けまわすのやめてくれない?  何のためにそんなことするのよ」 ポストに入れた行為をとらえて、 彼を非難した。 たぶんもっとひどいことも言ってしまっただろう。 一連のすべての怒りを爆発させたのだから。 けれど、 以前にも彼に会ったことも、 彼をひどく傷つけた事すら、 記憶には全く残っていなかった。 そしてそのことは、 さらなる、 彼の心の崩壊に追い打ちを掛けた。 「君が僕にこうさせているんだ。  僕の世界の中で、君がすべてで、  僕の行動は君のためなんだ。  でも君は何も分かっていないんだね。」 これが初めて聞いた彼の言葉だった。 そして無言で連れて行かれたのは、 彼が隠れ家のように利用していた廃屋の物置で、 ああたしは1人そこに閉じ込められた。 今でも夢に出てくる。 耳の奥に響いたガチャンという施錠の音。 1人残された彼の巣の様な廃屋。 風の音や、車の通る音に いちいちびくびくとした。
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