第3章 事件の真実

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しばらくドアのそばに立ちすくんでいたけれど、 ここにったった一人取り残されている事実にあたしは 狭い部屋の中を物色し始めた。 何か、ここから出られる手立てを探そうとしたのだと思う。 けれど。これと言っていい手立ては見つからず、 その代わりにみつけたのは、 あたしへの思いをつづった日記。 あの日突き返した手紙 あの事件からのあたしへの言葉の数々。 父の浮気現場の写真と家族達の写真。 そこに描かれていた殴り書き 『天使をはぐくむ家は純粋な愛の巣でなくてはならない』 友人たちの名前と写真 にも同じ用に走り書きがあった。 『天使を穢す不要な者たち』 彼は彼なりの価値観と考えで、 私を守っているつもりだったのだろうか。 今まで、身に降りかかったさまざまなことや、 なぜ彼がここに連れてきたか 理解した。 それと同時に、 あたしという存在が彼の世界を変えたという事実も知った。 中学生のあたしには想像すらできない、 奇異な世界観、過剰な愛憎 ただ、 彼だけを責める事はできない気がした。 彼の異常なまでの曲がった愛情に 恐怖だけが私を包んだ。 恐怖の中で あたしという存在は罪なような気がして 気が狂いそうだった。 半日ほで閉じ込められた後、 匿名の電話で居場所を知らされ、 担任によって救助され事件は終わった。
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