藍の輝石

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万里が作ったてるてる坊主が、願いを叶えてくれたのか、 今朝は昨日まで降っていた雨も上がり、眩しい太陽が昇っていた。 「夏樹、そろそろ準備できた?」 「おう!荷物は車に積んどいたから、直ぐにでも出発できるぞ」 3ヶ月前から彼女と同棲を始めた俺。 以前から良くフリーマーケット(通称:フリマ)に出展していたので、今回もいらないものは、フリマで、売ろうと言う話が二人の間で決まった。 「今回も洋服?」 「そ、タンスに入りきらない夏物。あと、これ」 「何それ?」 「ん?親父からもらったもの。もういらないから、好きにしていいぞ、って前にくれてたの思い出したんだ。 親父さ、マラソン好きなんだけど、オリンピックで初の金メダルを取った女性選手って誰か知ってる? 彼女が、34㎞地点で投げたサングラスと同じ品を親父買っててさ、自分では使わないくせにコレクションしてたらしいよ」 「へー。夏樹のお父さんも意外とミーハーだったわけね」 車の中での話題はもっぱら今日売るものの話。昨日の晩、お互い値付けに忙しく、万里が何を持ってきたのか、俺もよく分かっていない。 「あ!夏樹、そこ進入禁止の道路標識が出てるよ!」 「あ、やべ、一本道間違えた!」 「このナビ、たまにおかしくなるよね。それに、新しく出来た道に対応しなくなったから、海の上走ってることもあるし」 何かがあると万里は、こうやって俺のフォローをしてくれる。 今回も、一通を間違って入りそうになったのは俺なのに、それを責めることなくナビが古いからだと言ってくれるから、お陰で、気持ちに余裕が持てる。
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