紫陽花

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そんな美味しそうに食べている顔を失礼と思いつつもじっとみてしまった。 「付いてる」 自分の口元を指差すと、彼女は恥ずかしそうに自分の口元についているパイの欠片をつまんで口にいれた。 「パイって崩れて食べにくいですよね」 そういいながら、食べてだいぶ崩れてしまった残りのパイを口に放り込んだ。 「おいしかった」 彼女は食べ終わった箱を丁寧に畳み、余韻を楽しむように満足げな顔をした。 「ごちそうでした」 彼女の言葉に「いいえ」と返す。 すると「今度は自分の番だね」とでも言うように、足元で興味なさげにふせの状態で顎を地面につけ大人しくしていたパールが起き上がった。
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