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「さっき美穂ちゃんから電話あったよ?なんか一時くらいに来るって」
時計を見遣る。あと二時間ほどだ。
「…わかった」
多分昨日のことだろうが、昨日話した以上の話はない。
「…どーすっか」
ぼやきながら、窓の外を見る。モヤモヤした心証風景とは正反対の、憎たらしいほどの青空だった。
ーーーーー
約束の時間の二分前、不意にチャイムが鳴った。訪問者はいうまでもなく美穂である。
「…なんか、ごめんね」
「気にすんな、いくぞ」
とりあえず外へと出る。
間を流れる空気もまた、快晴とは正反対である。
「…あの、さ」
「何?」
「昨夜の話なんだけど…その、勇騎は…怖くないの?」
意外な問いだった。いや、意外というほどでもないが、予想した答えとは違っていたのである。
「…怖くないって言えば嘘になる。だけど、力を与えられて黙ってるわけにはいかない」
問いの答えに、美穂の表情はすこし緩んだ。
「勇騎らしいね、なんかちょっと安心した」
「…そっか」
先程のモノとは違う、微かに心地いい空気が二人を満たす。
が
『ぐっ…!」
不意に転がり出てきた男が、空気をぶち壊した。
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