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大抵の人間はここで引き返すだろうが、私は違った。
とにかく廃墟や廃村といったものが好きな男で、道なき山中を何時間
もかけて歩く事を苦としない、自分で言うのもなんだが少々奇特な人
間である。
そんな私がこの乙川集落に、興味を持たないはずがなかった。
看板の通行止めなど何のその、あっさりとロープを一跨ぎし、奥へと
進んだ。
その道に入ってからしばらくは、人が歩きやすいように整えられた、
やや緩い坂の細道が続くのであるが、大体30分程歩いてカーブに
入ったところで、雰囲気が少しずつ変わり始めた。
道の角度がどんどん急になって下り坂となり、それに連れて雑木林が
周囲を囲み始める。
道も少しずつ細くなり、尖った小石や窪みがそこらにあるので、登山
靴を履いてきてよかったと実感した。
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