乙川集落

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かなり古いものだろうか、すっかり朽ち果てた木の看板が斜めに建て られていて、かろうじて「コノサキ 乙川」と読めた。 辺りは竹林から名も知らぬごつごつした表皮の樹木の群生地へと変化 し、いよいよただならぬ異境へ来たという事実を強く実感させられ た。 そのまま、湿気が含まれたゆるい地面をちゃくちゃくと歩き、ようや く件の乙川集落らしき場所へと着いた。 そこは想像していたよりも奇っ怪で、常識を外れた場所だった。 村の前には大人の男性ほどの大きさの鳥居がある。 かなり古い時代のものだからか、その木材は完全に朽ち木と化してい て、赤く塗られていた跡が欠片のように付着している他には、あちら こちらに食べられそうにないきのこが生えていた。 そして肝心の集落は、その鳥居をくぐった先に存在している。 つまり、何故かは分からないが、この鳥居が集落の入り口となってい るわけだ。
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