第1章

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徹夜は驚いたようにギョッとしていたが、鬼は構わず体当たりをした。そして、徹夜の体の上に馬乗りになった。 「うあああっー」 無我夢中で徹夜を殴った。これでもかというぐらい殴った。人を殴るのははじめてだったから、拳はとてもいたかった。でも制裁を加えるのは気持ちがよかった。そのとき、ふと思い出した。 「ビンタをしている先生の手も痛い! 叩かれた顔と同じくらい痛いの? 分かる?そして、先生の心はもっと痛いのよっ!」 と先生が言っていたけど、どの先生だったかは思い出せない。でもひとつだけ分かったのは、これを言った先生の言葉が嘘だということである。鬼はそう感じていた。制裁を加えている鬼の拳、手のひらは爽快感に溢れた。殴り続けていると、徹夜は大声を出し、泣いた。でも、鬼はやめなかった。哲男先生と同じように何度も殴った。気がすむまでずっとずっと、憎しみをこめ、自分の心の傷、屈辱をなくすぐらいひたすら徹夜をなぐり続けた。
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