第1章

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いじめっ子の名前は、夜具徹夜と尾長慎一の二人。夜具徹夜がいじめの中心格。尾長慎一は、それに便乗し、楽しんでいるやつだ。中心格になるやつもタチが悪いが、それに便乗するやつもタチが悪い。いじめは、さほどひどいものではなかったが、結局、同じクラスになるたびにいじめられた。 小学二年生の頃は、同じクラスに、ならなかったので、いじられることもなく、いじわるな子も1人もいなかったので、とてもよかった。もともと、学校は好きじゃなかったので、家に帰るのが楽しみで仕方なかった。帰りの会が終わると、帰るのはいつも一番で、クラスのドアの前に立ち、大きな声で毎日 「先生、サヨウナラアッー!」 と大きな声を出して、教室をあとにしていたぐらいだ。 学校では必ずではないが、担任によっては不定期に「学級だより」を発行する。小学二年のころの鬼のクラスの担任もそうであった。毎回、学級だよりではクラスの面白いことが書かれているので、鬼はそれを読むのが楽しみだった。ある日の学級だより。こう書かれていた。 「鬼くんは、いつも帰るときだけ、大きな声でサヨウナラアッーと言って帰ります。みなさんも見習いましょう。」 鬼はそれを見たときとても嫌な気持ちになった。不愉快な気持ちだ。サヨウナラアッーと大きな声で言うのは、むしろ誇らしかったが、先生が「鬼くん」と学級だよりに書くことが幼心ながら、ショックでたまらなかった。そして、みんながその学級だよりを見ながら、鬼のところを向いて笑っている顔が忘れられない。 幸い、このクラスはいい子だけだったので、この学級だよりをきっかけにいじめがはじまることはなかった。でも、先生が嘲笑うかのように自分のことを「鬼」と表面では言わなくとも、心の中でそう言っていることを知り、許せなかった。幼心ながら、鬼は真剣にこう思った。 「殺したい」と。
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