第1章

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鬼と潤平は、早足で奥へと向かっていく。さっきと同じように鬼、潤平は何かボールのようなものを暗闇だけに、電灯で照らしても限度があり、意図せずとも蹴り飛ばしてしまっている。 二人とも骸骨を蹴ってしまっていることはわかっているのだが、そんなことは気にしていられなかった。奥へ奥へと進んでいく。そこで、ようやく突き当たりに差し掛かった。何か山のようにゴミが積まれている。そこで、二人は電灯で照らしてみた。二人は目を見開いた。潤平は腰を抜かしてしまっている。 鬼「どうなってるの………」 潤平「鬼ぃぃぃ。やばいよぉぉぉ。やばいよぉぉぉ。ひっ。ひっ。」 潤平は泣き出してしまって、後半は声にならなくなっている。それもそのはずだ。鬼も正気を保つのが精一杯だった。鬼自身、正気を失わないのが不思議なくらいである。 鬼と潤平が目にしたもの。それは、死体の山である。死体の山というのは、正確には間違いかもしれない。白骨化した人間の山というべきだ。それが目の前につまれているのだから、腰を抜かして当たり前だ。 見る限り、動物でなく、人間であることはたしかみたいだ。その白骨化した人間の山には、頭蓋骨がたくさんあり、動物の死体が混ざっていたとしても、人間の死体の山にしか二人は思えなかった。 ただ、このとき鬼は不思議な感覚にとらわれていた。死体の山、正確には白骨化の山というべきだろうが鬼はどっちでもよかった。心の中で、しねしねしねしね、殺せ殺せ殺せ殺せ、ささやきかけてくる。鬼は、頭がおかしくなりそうだった。 もちろん、そばで腰を抜かしている潤平を殺したいわけでもないし、死んでほしいわけでもない。ただ、しねしねしねしね、殺せ殺せ殺せ殺せとささやく自分がいる。 誰にしねといっているのか、誰を殺せといっているのか理解すらできない。頭が痛い。 潤平「お、鬼、どうしたの? うう うぅ 言って気分悪いの?」 どうやら、潤平は正気を取り戻しつつあるようだ。 鬼「頭が痛いんだ。頭が痛い。」 潤平「薬持ってるよ! 俺、頭痛持ちだから薬は忘れない限り、持っているんだ!」 潤平は、鬼の返事を待たずに、素早く頭痛薬と水のペットボトルを差し出した。鬼は、ほんとは飲みたくなかったのだが、潤平の気持ちをありがたく頂くことにした。そして、少しでも混乱した自分が収まるように祈りながら、薬を飲んだ。
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