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大五郎は、今度は木の影でなく、茂みをみつけ、そこに身を潜めていた。おそらく、まさるとの距離はあまり離れていない。だが、もう体力が限界だったので、休むしかなかった。
そのとき、ちょうど逃げている道のそばに茂みをみつけた。だが、そこは村の位置からすると大体一メートルぐらい下に降りなければならなかった。
それは大五郎にとって好都合だった。お年寄りとかでないかぎり、その距離は容易にジャンプをしたら降りることもでき、さらに茂みなので、身を潜めるにはうってつけだった。しかも、その茂みに隠れていれば、茂みに隣接している道は軽く見上げる形で、大五郎の位置からはよく観察することができた。
大五郎は茂みに隠れながら、できるかぎり音を立てないように担いでいたリュックの中から、飲み物を取りだし、ごくごくと飲んだ。お菓子も食べようかと思ったが、カリカリと食べる音が聞こえてしまいそうなので、それはやめた。
案の定ではあったが、茂みにもさきほどの木の影と同様に蚊がたくさんいた。さらに、この茂みは排水溝も近くを通っているらしく、こばえもすごい。
ただ、さっきは蚊がうっとおしくて、手をブンブン振り回し、蚊を追っ払ったため、その物音のせいでまさるに見つかってしまったのをよく覚えている。
もちろん、この茂みも蚊やこばえを追っ払いたいぐらいである。だが、どんなに蚊に刺されて痒くなろうが、我慢した。さっきみたいにそれがきっかけでまさるに見つかってしまい、追い回されるハメになってしまうのは勘弁だ。
大五郎は茂みに身を潜めながら、考えていた。まず、大五郎は茂みの中であるものを探す。手探りにそれを探したら、感触は悪いが、それをズボンの右前、左前と両方のポケットに入れる。そして、ムヒはズボンの右後ろにあるポケットに入れた。
大五郎は後悔していた。もとを正せば、謎の村にきてしまったことが悪いのだが、逃げずにまさる、そしてまさるのお母さんにしっかり謝ったらこうはならなかったのではないか。それなのに、一度ならず、二度までまさるを怒らせてしまった。特に目にムヒを塗ったのは、間違いだったかもしれない。完璧にまさるを怒らせてしまっただろう。
(捕まったら、本当に殺されちゃうかもしれない………)
そう考えると、大五郎は泣きそうになってきた。
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