第1章

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まさるは、大五郎が隠れているだろうところを目星につけていた。 この村は細かな道はありはするが、ただ、そこは家と家の間だったり、何かの荷物の側だったりと隠れるところはたくさんある。 しかし、見知らぬものが隠れるとしたら、草むらや木の影、茂みなどそういった場所の可能性が高い。 (母ちゃんの話だと、入り口は村のもんが見張っているから、やっぱ草むらとか中心に探すか。まあ、それも場所は限られてるし、すぐ見つかるべ。) そう考えると、まさるは草むらのある方向へと足を進めた。 一方の大五郎は、まだ茂み中で隠れていた。そして、体力も回復し、そろそろいこうかと思ったとき、何やら人が歩いて来たので、できるかぎり物音を立てないように身を潜めた。そして、じっと歩いている人をみる。 (ま、まさるだ!) 大五郎は、思ったより、早くまさるが復活したことに驚いた。 一度、大五郎は目元を蚊に刺され、そこにムヒを塗った。軽く塗っただけなのに、メンソールの効果が目元ではなか、眼球にまで及び、約一時間耐え難い苦痛を味わい、ようやく目を開くことができたというほろ苦い思い出がある。 その倍以上の量を、まさるの両目に塗ったのに、ほんの15分ぐらいでまさるは回復していた。 (ありえない………) 大五郎はそう思った。 まさるは、目星をつけた場所にどんどん足を動かす。その足は見事、大五郎が隠れている場所にむかっている。大五郎はまさるを見ていたが、どんどんまさるが近づいてきたので、いま以上に縮こまり、両手で頭を押さえた。 (神様、お願いです!! どうか見つかりませんように! もう、謎の村には二度と来ません!! 生きてかえれたらちゃんと謝ります!! お願いします!!) 1分、2分、時間は過ぎていく。大五郎は両手で頭を抱え込み、身を丸めていたが、足音などがしなくなったことに気づいた。 (足音が消えた………た、助かったんだ!) 大五郎はふうっと息を吐き、丸めていた身を元通りになおした。そして、頭を少し上にあげ、まさるが歩いていた方向を見た。 ギョッとしたー。 ニンマリと見てるー。 目が合ったことを確認するー。 口が動いたー。 「ガキンチョ、みぃーつけーたっ」
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